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小学校高学年の頃、週末の夜は「必殺仕事人」を楽しみに観ていた。子どもが観るにはいささか陰惨で品のない話なれど、後年再放送を見返した時、この頃はかなりマイルドな勧善懲悪な仕立てになっていたことを知る。とはいえ、テレビが「娯楽」の役割を充分に果たしていたのはわかる

 何クールかおきに番組も主役も代わり、京マチ子の美しさも津川雅彦の洒脱さも好きだったが、とりわけ中村主水の可笑しさと抜群の格好良さがお目当てだった。藤田まこと扮する昼行灯ははコミカルさとダンディズムを兼ね備えたダーティヒーローだった。

 当時、関西ローカルのトーク番組に出てくる藤田まことは、飾らない格好良さと芸人顔負けの可笑しさに包まれていたが、それでもどこか怖かった。この時「スター」はまだ近づきがたい、手の届かないヒーローだった。

 彼の最大の武器は、言葉を自在に操れるところであったと思う。江戸言葉と上方言葉、どちらも芝居によって巧みに駆使できる稀有な役者であった。関西育ちの私には、NHKの朝ドラマに出てくる「似非関西方言」はすぐに見抜ける。
 これは、喜劇人としては、東の才人渥美清も西の天才藤山寛美にもできなかった。この力量があるスターは、藤田まことと森繁久弥のふたりしか私は知らない。

 逸見政孝さんが入院した時、ピンチヒッターで彼の音楽バラエティーに藤田まことが出たのを偶然見たが、あまりにも歌が上手いことに衝撃を受けた。「ひとり咲き」をじっくりと聴かせた時は、身体の芯が「痺れた」。テレビから流れる歌に痺れたのは、三波春夫の「俵星玄蕃」をたっぷり聴いた時と、数えれば二回しかない。

 私の心の中で、スターと憧れる人がこれで完全にいなくなったと思う。そして、その不在は、あまりにも大きい。


「必殺」シリーズや「はぐれ刑事純情派」の名優・藤田まことさんが死去。

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